日本の名作を読む 第14講 2 雨月物語(N)

簡単なまとめ

この動画では、丈部左門という清廉潔白な人物が、赤穴宗右衛門という武士と出会い、義兄弟の契りを結ぶ物語が語られます。宗右衛門は一度出雲へ帰る約束をするも、重陽の節句の夜に幽霊となって左門の元へ戻ってきます。

  • 左門と宗右衛門の出会いと友情
  • 宗右衛門の身の上と出雲への帰郷
  • 約束の日の夜、幽霊となって現れた宗右衛門

丈部左門と赤穴宗右衛門の出会い

丈部左門は、ある日知り合いの家で病に苦しむ旅人、赤穴宗右衛門を献身的に看病します。宗右衛門は命を救われたことに深く感謝し、死んでも恩を返すと誓います。宗右衛門は出雲国富田の城主、塩冶掃部介に仕える武士であり、密使として近江に滞在中に主君が尼子経久に討たれたという過去を語ります。

意気投合した二人

左門と宗右衛門は昼夜を問わず語り合い、意気投合します。二人は互いの価値観や感動するポイントが一致し、無二の親友となります。そして、兄弟の誓いを結び、義兄弟となることを誓います。宗右衛門が兄、左門が弟という関係になります。

出雲への帰郷と約束

宗右衛門は、主君の仇である尼子氏の動向を確かめるため、出雲へ帰ることを決意します。出発の際、九月九日の重陽の日に必ず戻ると左門に約束します。左門は宗右衛門との再会を心待ちにしながら、その日を待ちます。

約束の夜、幽霊となって

約束の九月九日、左門は菊の花を飾り、酒肴を用意して宗右衛門の帰りを待ちます。しかし、夜になっても宗右衛門は現れません。諦めかけたその時、左門の目に黒い人影が飛び込んできます。それは、幽霊となった宗右衛門でした。宗右衛門は自分がすでに現世の人間ではなく、汚れた魂が仮の姿を借りて現れたのだと告げます。

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文字起こし

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0:00 それでは、お話の続き、展開を見ていきましょう こういう真面目で非常に潔白、清廉潔白というね そういう人物である丈部左門さんがですね お友達になる人と出会うことになるんですね その後、「ある日、左門が知り合いの家に行くと 壁を隔てた部屋で病気に苦しんでいる旅人がいる」と その感染の危険をも顧みず 懸命に看病した左門のおかげで この旅人が一命を取り留めた訳ですね その旅人はこう言います 「死すとも御心に報ひたてまつらん」と非常に感謝した 「死すとも」死んだとしてもですね

0:46 「御心」あなたのお気持ち このご恩を返しますということですよね という風に感謝したと 一命を取り留めているんですから ありがとうでいいんだと思うんですけれども ここで死んだとしてもって言うところが なんだかちょっと 何かを思わせるようなところがありますけれども 死んだとしてもご恩は返しますという風に それぐらいこの旅人はもう感謝、感動したということですよね この旅人、何者かということなんですけれども その旅人自身が語るところによると 旅人の名は、赤穴宗右衛門という人物なんですね

1:31 この人は、出雲国富田の城主 富田の城主 塩冶掃部介に仕える武士なんですね 武士ですから、武士道ですよね 義理というものですね ご恩とか義理とかという道で生きている人なんですよね 武士だというと、密使として選ばれて 近江の佐々木氏綱 出雲国の守護職ですけれども 出雲のね、仕えている人の守護職の館に滞在中に 近江に密使として赤穴が滞在している時に 出雲の城主 塩冶掃部介ですよね この人が尼子経久に城を奪われて

2:18 討ち死にしてしまったというえらいことが起きてしまう訳ですね そこで、近江の佐々木さんのところへ行っていた宗右衛門は 佐々木氏綱ですね この人に尼子を追討しようという風に進言した だけれども、臆病な氏綱はそれを果たさず 宗右衛門はかえって身柄を拘束されてしまった そこでなんとかこの人は身体一つで脱出して このね、城主の、仕えていた城主の この出雲に帰る今途中だと その途中で病気になってしまったんだという風に言うと そういう風に身の上を語ったですね この赤穴宗右衛門ですね

3:04 その人とこの丈部左門が色々語り合う訳です 左門と惣右衛門は昼夜を問わず語り合った 二人は何一つとして心が合わないことがなく もう意気投合しちゃった訳ですね 感心したり、喜んだりすると 非常にそういう感動するところ、喜ぶところとかね そういうポイントが同じだったんですよね 非常に心が通い合う友だ 無二の友ですよ、こういうの 無二の親友とか言いますよね こういう人と出会うことができた訳です そこで、この二人はもう意気投合しちゃったので 兄弟の誓いというものを結んだと

3:52 二人は義兄弟ということになる訳ですね ちょっとここでは引用では略していますが 赤穴宗右衛門ですね この人がお兄さん、年上なんですね 丈部左門が弟 ということで、二人は義兄弟という結びですね それを持ったということになるんですね この二人が意気投合して仲良くしていたんですけれども 赤穴宗右衛門は出雲に帰る途中でしたよね そもそもは、ですからやっぱり出雲がですね この城主が亡くなった後、どうなっているのかということが 非常に、やっぱり武士ですからね

4:38 武士である赤穴宗右衛門は気になるということで いっぺんちょっと出雲に様子を見に行きたい ということになる訳ですね さあ、「初夏のある日 宗右衛門は九月九日の重陽の日に必ず戻ると約束して 出雲の国の様子を見に行った」と この九月九日の重陽の日 これが重陽の日には、菊の花を飾るんですね だから九月九日には絶対戻ってくるから ちょっといっぺん、出雲の国の様子見に行ってきますと言って 宗右衛門が出雲に行く訳ですね 初夏から九月九日まで待っている訳です、丈部左門はね

5:24 ようやくその九月九日が来たと 約束の九月九日、左門は今日帰ってくるなと 赤穴宗右衛門が帰って来るなということで 重陽の節句ですから、菊の花を飾って 酒肴の用意をして宗右衛門を待ったと ところがですね お昼が過ぎたと、夕方になってもやって来ない訳ですね お母さんがですね、もう明日にしたらと 明日にして家に入りなさいよという母 いやいやそんなやつじゃないと 赤穴宗右衛門はですね 兄弟の誓いを結んだあの赤穴宗右衛門が 約束を破るはずはないと言ってですね 言いなだめてですね お母さんを先に寝かせて

6:09 もし万が一にでもと戸外へ出てみると もしかしたら来るかもしれない 時間ね、間に合わへんかったと言ってね 夜遅くなっても来るだろうと思って外に出てみたと そうすると「天の河の星影も薄れがちで 月は自分一人を照らして淋しく どこかの番犬の吼える声が澄み渡って聞こえ」ると ここら辺の描写が何か凄いよね 星の光も薄れがち 月がもう自分一人を照らしてシーンとしている訳ですね 月の光と自分一人、月が自分にバーっと当たっているような感じ そしてどこかの番犬がウォーンとか皆さん想像してくださいね

6:57 声、夜の犬の遠吠えの声というのはなんか響き渡りますよね それが澄み渡って聞こえ 海岸の波の音が足元まで聞こえてくるかのように 静まり返っている ザザザザ、ザザザザと 夜の波の音ですよね そういうものも聞こえてくるかぐらいに 静まり、シーンとしている夜だと 何かが起こりそうと思わせる訳ですね そうすると、月の光も山の際に陰くなれば 月の光が山の端に入ってですね ちょっと暗くなった ああ、もう来ないのかなと こんな真っ暗になってきたから、もう駄目かなと思って もう今はもう駄目かなと思って、戸を閉めて中に入ろうとしたと

7:48 そうすると、「ただ看」、パッと見るということですね 「ただ看」というのは パッと、パッと目に入ったものですね これよく白話小説で出てくる言葉なんですね ちょっとパッと視界に入るということありますよね 意識してないけど、不意にパッと目に入ってきたというのね そういう感じを表しているんですね ただ見る、パッと もう今までのところはシーンとして この丈部左門ですね、左門だけが こうスポットが当たっていた 夜の静寂ということが描かれていたんです

8:34 そこで、パッと焦点がですね この丈部左門の この目というね、視界というものを通して 読者の目の中にばっと入ってくるんですね 何が見えたかというと 「おぼろなる黒影の中に人ありて」と 「風の随来る」と 黒い人影がですね、風に従ってやって来る訳ですね 風にまかせてね、風のまにまに、それをあやしいと 「何だあの黒い人影は」と思って見れば、 それは赤穴宗右衛門であったということなんですね 「ああ、帰ってきたのか」ということで喜ぶ訳です

9:20 「帰ってきた宗右衛門に、左門は踊りあがるここち」 すごい嬉しい訳ですね 友が帰って来たということで、踊りあがるここちになり さあさあと家に招き入れようとするんだけれども 何かちょっと様子がおかしいんですね 宗右衛門は、うんうんと頷くばかりで一言も発しない お酒を勧めても、袖で顔を覆って 何かこうお酒の臭いを避けるようなというね、仕草をすると どうしたのかな 何にも喋れないし、シーンとしていたら しばらくして長いため息をついて ようやくこの宗右衛門が語り出した こんなこと言うんですね 「吾は陽世の人にあらず、きたなき霊のかりに形を見えつるなり」

10:09 もうびっくりですよね 私はあと陽世って現世ってことですね この世の人ではありませんという訳です 私はこの世の人ではありませんと 汚い魂 死ぬことって、これは穢れだというような考え方もある訳ですね そういうことを踏まえているんでしょうね 死んで汚い魂になってしまった その魂が今かりそめに姿をあらわしているんですよと 幽霊なんですということですね 私はこの世の人ではありませんと

10:55 亡くなってしまったこの魂が今かりそめに姿を 宗右衛門の体の形を取っているだけなんです もうびっくり仰天ですよね ええ!どうしてそんな不思議なことをおっしゃるんですか 私には全く、夢にも信じられません という風に言う訳ですね まあ、何があったの宗右衛門さんということですね ということはその後見ていきましょう 一旦ここで切りましょう

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