0:00 はい、こんにちは 今日は『源氏物語』を読んでいきたいと思います とても有名な大作です 皆さんと一緒に読んでみたいと思います まずね基本知識を押さえていきましょう ジャンルは物語ですね 成立は大体1000年ぐらいなんですけれども 平安中期、1010年頃 大まかな時代区分でいうと、中古ということになります 作者は紫式部ですね ポイントは何と言っても、古典文学の最高峰という風に 位置づけられています 私達はこの「名作を読む」の授業でいくつか物語を読んできましたね 『竹取物語』『伊勢物語』『落窪物語』を読みましたね 『古事記』なんかも言ってみれば物語ですよね
0:47 ああいう物語とこの『源氏物語』は、では何が違うのか 今までの物語文学と、どこがどういう風に違うのか 何が紫式部はすごいのかというところですね そこをちょっと考えながら 今日の回を読んでいただけたらいいなという風に思っています それで、他と違うのはまず長いというところがありますね 大長編物語です 全部で五十四帖、54巻ということなんですけれども 『源氏物語』については五十四帖という言い方をしています 『源氏物語』は五十四帖の大長編物語です そういったすごい作品を書き上げた 紫式部という人はどういう人かというと この人は女房なんですね
1:32 中宮彰子様にお仕えする女房でした 「しょうし」という風に読みます それで、お父さんは学者なんですね 藤原為時の娘で、お兄さんがいるんですけれども お兄ちゃんよりも早く漢籍を理解する、聡明な少女であったと だからお父さんはですね、この娘が 女の子ではなくて男の子だったら良かったのになと そうしたら、すごく出世するのになという風に思っていたぐらいですね 非常に頭のいい、頭が切れる女の子だったということですね ですので『源氏物語』というのは 平仮名の文学で漢字の文学ではありませんけれども
2:20 そこにはこういった小さい頃からの素養ですね 漢籍の知識なんかも、ふんだんに織り込まれている それが物語の厚みというのかしら そういうのを増すのに役立っているという風にも考えられています それで、紫式部もお年頃になって結婚するんですね ところが、この夫の藤原宣孝という人が亡くなって 先に亡くなってしまうんですね 紫式部が29歳の時という風に考えられています その時、旦那さんが49歳だったということですから かなり年の差と言いますかね そういう結婚だったんですけれども それで、一人になったので『源氏物語』を書き始めたと それが評判になったのか、噂になったのか
3:08 それがきっかけではないかと言われていますけれども 中宮彰子様にお仕えするようになったということですね (執筆を)始めて、その後ですね 宮中に働きに行くということになる訳ですね そして『源氏物語』をどんどんどんどん 「面白いから書いて、紫式部!」 と言われたのかどうかは知りませんけれども たくさん書いていって、そして五十四帖という大長編作品が 生まれるに至ったということなんですね だから紫式部は、女房という宮中にお勤めに出ていますけれども 言ってみれば、今でいうキャリアウーマンということになる訳ですね
3:57 専業主婦の道からキャリアウーマンへという、そういう道を辿ったと 宮中に仕える女房というのは こういう風に旦那さんが亡くなってとかね そういう人が第2の人生ではないけれども 次のステップということで 宮中に出るというパターンも、ままあったみたいですね これはちょっと雑談になりますけれども さあ、話を戻しまして、内容です 大長編ですので、大体三部に分けて構成されているという風に考えます まず第一部は、主人公である光源氏の39歳まで 脂が乗る時期までですね、そこを描くと 色々な恋をする訳ですね、女達と色々な恋をして
4:43 そして宮中でのポジション、権力というものを獲得していくという そのイケイケゴーゴーな時期と言いますかね それが第一部で、それぞれの巻には 素敵な名前が付けられているんですね 桐壺の巻から藤裏葉までの巻 これが第一部になっています 第二部は、中年以降ということですね 若菜の上巻から雲隠の巻まで 光源氏、これは晩年の悲劇と出家ということで なかなかやっぱりいいことばかりではないんですよね、源氏の人生も 色々な辛いこともあったりして、そして源氏は出家をするという その中年以降の後半生を描いたのが第二部ということになります そして第三部は、これはもう光源氏の没後の話なんですね
5:32 光源氏の子孫達の恋愛と運命というものを描くのが第三部です それで、この匂宮から夢浮橋の巻のうちですね 舞台が宇治になる 宇治を舞台とした、橋姫から夢浮橋の巻は 特に宇治十帖という風に呼ばれてもいます さあ、今日はこの五十四帖のうちですね さすがに全ては扱いきれませんので 「紫のゆかり」ということに着目して、お話を見てみたいと思います 『源氏物語』を読んだことがある人は 「知っているわ!」「とても好き!」と 思われている話だと思いますけれども 原文も紹介しますので
6:17 原文の方で紫式部はどういう風に工夫して書いているのかという この複雑な人間関係、そして心理ドラマというのをね 古文でもちょっと味わっていただけたらいいなという風に思っています さあ、「紫のゆかり」とは、知らない人は何ぞやと思いますよね これは光源氏をめぐる三人の女達をつなぐキーワードなんですね そのめぐる三人の女達というのはここに挙げた三人 藤壺・紫の上・女三宮という 源氏をめぐる三人の女達 これが「紫」というこの縁ですね 縁がある女達なんですね さあ、どういう「紫のゆかり」かという これを人物関係図を作りながら、一緒に確認していきましょう
7:06 主人公の光源氏がいますね そして三人の女達 藤壺・紫の上・女三宮と さあ、どういう風に関係してくるのかということなんですけれども まず光源氏はね お父さんとお母さんを確認しておきましょう それは桐壺帝、帝ですね それと、桐壺更衣の間に生まれたのが光源氏になります こういうことですね 桐壺帝と桐壺更衣の間に生まれた子 これが光源氏ということですね だから帝の血を引くという高貴なお血筋なんですね、光源氏は そして、なんだけれども お母さんである桐壺更衣が
7:53 光源氏がもう小さい時に亡くなってしまうんですね 天使のリング、分かるかな 小さい時にお母さんが亡くなってしまう訳です それでその後、この桐壺帝のところに 入ってきた、やってきたのが藤壺になるんですね その後、こういうことですね 桐壺帝のところに入内したのが、この藤壺という人物です この藤壺はですね 後で読んでいくんだけれども このお母さんである桐壺によく似ていると 面影があるということなんですね
8:38 光源氏は何となく、小さい時はお母さんが恋しいですよね 「お母さん恋しいなあ」という思いで藤壺のことを見ている だけれども、だんだん成長してきて大人になってくると ちょっと意識をし始めて、恋心を抱くようになるんですね こういうことですね それで、恋心を抱くんだけれども 言っても、これはお父さんの奥さんになりますから 心の中で思っているだけでしか、もうどうしようもない訳ですね それで、若い光源氏はちょっと悶々としてしまうということなんです それで、心の中で思っていたんだけれども その越えてはならぬ一線を、ついに光源氏は越えてしまって
9:29 藤壺は源氏の子供を宿してしまうんですね それが、この冷泉帝に後になる、東宮なんですけれども 東宮と書いているよね この光源氏と藤壺の密通は これは表に出ては絶対にいけないことなので 表向きは、この東宮は 桐壺帝と藤壺の間の子供ということになっているんだけれども 実はこういうことですね 光源氏と藤壺の間にできた子供という もうここだけでも、とてもややこしい関係なんだけれども それにさらに、紫の上と女三宮が関わってくるんですね
10:14 では、この紫の上はどういう人かというと この人は光源氏の正式な奥さんになった人です だけれども、この人は実は、藤壺と関係があって というのは、この藤壺ですね 藤壺にお兄さんがいるんですね 兵部卿宮というお兄さんがいるんですけれども 兄ということですね このお兄さんの子供が紫の上 だから、恋しい藤壺の血筋なんですね ということでですね なんだか複雑というね 紫の上は、ちょっと複雑なんですけれども ここが一つの「紫のゆかり」がある訳ですね
11:01 そして今度、この女三宮です 女三宮はどういう縁があるかというと 今度、藤壺に女の兄弟がいる訳ですね ちょっとややこしくなってきましたね、系図が こういうことなんですけれども この女御と、朱雀院という人、これは光源氏のお兄さんです 朱雀院がお兄さんだから、こういうことですね 桐壺帝の息子ということですね お兄さんですね 朱雀帝とこの藤壺の女兄妹との間にできた子供
11:48 これが女三宮になる訳ですね なので女三宮も藤壺と血が繋がっているということになる訳です それで、この女三宮と光源氏は 光源氏が中年になってから結婚します ということで、光源氏の奥さん、紫の上と女三宮このお二人ですね お二人は実は、藤壺のゆかりだったと しかも血の繋がりがある人を 源氏は奥さんにしているんだということなんですね なんだかとてもややこしい 複雑という、そういう女性関係ですね
12:36 女達との光源氏の関係というものを 今日は、見てみたいと思います それで、この藤壺と紫の上、女三宮 この関係というのを「紫のゆかり」という風に呼んでいるんですね 藤色はこれは紫の例ですね ですから、そして紫の上という風に呼ばれていますけれども 紫の関係があるということで「紫のゆかり」という風に言っています それはそれだけではなくて 実はここの3番に紹介した和歌です この和歌を踏まえて「紫のゆかり」という風に呼んでいるんですね さあ、この和歌はどういう和歌かというと 「紫のひともとゆゑに武蔵野の草はみながらあはれとぞみる」 という歌なんですけれども
13:23 紫の一本の草、ということですね 紫草というね、草の一本 「ひともと」ですね、一本があるからということですね 紫草の一本があるから、武蔵野に生えている草は 「みな」全部ということですね 全部「あはれ」愛しいなという風に思うよ 「みながら」というのは、全て 「あはれ」というのは心が動かされることをいう古語ですね 紫色の草ですね、紫草が一本ここに生えているから その草があるからもう全部の草が 全部「ああ好きだなあ」という風に思ってしまうという
14:13 好きなものと関わりのあるものはもう全部 理屈なしに好きと思ってしまうという そういう気持ちを詠んだ和歌なんですね この和歌ですね 「紫のひともとゆゑに武蔵野の草は…」全部愛しいなという この和歌の言葉だよね 言葉からですね この光源氏と女達の関係を「紫のゆかり」という風に言っています だから紫と、藤壺と、関係のあるものは全部愛しいなという風に
15:04 源氏は思ってしまうということですね さあ、この三人の女達と光源氏はどういう関係性なのか どういう風に『源氏物語』の中で 紫式部は描いているのかというところを読んでいきたいと思います 一旦ここで切りますね