0:00 では続きを読んでいきましょう 美しく成長したかぐや姫に その噂を聞いてたくさんの男達がアプローチをしてくるんだけれども かぐや姫はまったく関心を持たないので だんだん脱落者が出ていくんですね その中で残ったのが、五人の求婚者達が残ります その人達はもうご飯もろくに食べずに、姫の家を歩き回ったり 手紙を書いたりするんだけれども、姫から何の返しもないと 雪の日も氷が張る日も、猛烈に暑い日も 雷が轟く日も、通い続けると、熱心ですね そこで気の毒に思った翁は、かぐや姫に言ったと かわいそうだよと言うことですね 「仏のように大切なわが子よ」ともうこれで
0:48 翁がかぐや姫のことをどない思てるかというのがよく分かりますね もう仏様のように、崇め奉っているようにですね 大事に大事に思っているんですね 「変化の人であるあなたを、ここまで育てた私の心を思い」 「私の言うことを聞いてくれますね」という風に話しかけます そうすると、かぐや姫が「もちろんです。自分が変化の者とも思わず」 「ただ親と」あなたのことを親だという風に 思って今までおりましたよ、という風に答える ここの会話のやりとりですね なんてことないちょっと読み飛ばしそうな会話なんですけれども ちょっとポイントとしては、おじいさんがですね かぐや姫のことを「変化の人である」という風に言っているんですね
1:37 おじいさんはかぐや姫をちゃんと、その竹の中から発見しているので この人は人間ではないということも元々ちゃんと分かっている訳ですね おじいさんは姫を人間ではないと思っていると それに対してかぐや姫はこういう風に答えているんですね 「自分が変化の者とも思っていませんでした」と いう風に答えているんですね つまりかぐや姫は おじいさんがどうやって育てていたかというと もう家から一歩も出さずに箱入り娘状態で育てていた訳ですよね
2:24 ですから、他の人がどんな女の子かということももちろん 世間を知らない訳だから かぐや姫はこの育てられて自分が生きている感じというのは 普通で当たり前のことという風に思っていたので 自分はもう人間だと思って育ってきた訳ですね ここで少し翁とかぐや姫の中でちょっとズレが出てくるんですね 自分は人間だと思って おじいさんのことも私の親だと思って過ごしてきたんですよ
3:12 という風に言ってあげる訳です これはおじいさんにとってはうれしい一言ですよね おじいさんのことを親と思っていますよ、という風に答えているので 愛情を持って育てたかいがあったなという おじいさんにとってはうれしい一言でもあったと思います ただ、 このズレというのが次のセリフにつながってくるんですね ちょっとその後の会話のやりとりを見てみましょう 「翁、年七十に余りぬ」かなりなおじいさんですね 「今日とも明日とも知らず」と もういつ亡くなってもおかしくないと 自分の寿命がですね いつ尽きるかもわからないということですね ちょっと補っておきましょう 寿命がですね、今日をつきるか明日つきるかもわかりませんと
4:03 「この世の人は」人間の世界の人はということですね 「男は女にあふことをす。女は男にあふことをす」と それによって「門広くもなりはべる」という風に言ってですね 「あふ」というのは、ただ単に人と人が会うという 「meet」ですね、その意味ももちろんあるんですけれども 「男が女に」と「女が男に」と言った場合には 「あふ」ということは、結婚する・関係を持つという そういう意味も含まれてきますね 昔は女の人はやっぱり御簾というすだれみたいな感じの中にいて 人前に姿を現すとか、顔を見せるということはなかなかしない
4:52 というのは古文の世界でしたよね、ですから 直接に顔を見て会うということはそれだけでもう 肉体関係を持つということになるんだという風に 考えられてきた訳ですね ですから、結婚するという風に言うておきましょう この人間の世界の人はですね 人間世界ではということですね 男と女というのは、結婚というものをするんですよと 結婚することによって「門広くもなりはべる」と 家門が広がるということですね、家が繁栄する それによって家というものは繁栄していくんですよという風に言っている
5:38 だから「いかでかさることなくてはおはせむ」と 「いかでか」というのは「Why」どうして どうしてそんなこと、これはもう結婚のことですね どうして結婚しないでいることができましょうかと どうして結婚しないでいられましょうかと どうして結婚せずにいられようかというのが直訳の形ですけれども 平たく言うと結婚しなさいという風におじいさんが言うた訳ですね 私の言うことを聞いてくれますよね、と言って前置きをして
6:23 そしておじいさんはどうか結婚してくださいよと もうおじいさんもね あなたの面倒を見られるのもいつまでかも分かりませんから 結婚して、そして旦那さんもうて そしてその人と一緒に暮らしてください という風にお勧めをしている、親心ですよね おじいさんも親心として言った そうすると、かぐや姫はこういう風に答えるんですね 「なんでふ、さることかしはべらむ」という風に答えた これが面白いんですね 「なんでふ」というのはこれは「Why」ということです どうして「さること」と、これはもう結婚のことですね どうして結婚しなくちゃいけないの、という風に言ったんですね
7:10 どうしてそのようなことをするんでしょうか というのは直訳ですけれども どうして結婚しないといけないのと もうおじいさんはびっくりですね 普通女の子はある程度の年頃になったら結婚するというのが この人間の世界の、この常識な訳ですよね だからそれは当たり前のことなので まさか「なんで結婚せなあかんの」という答えが返ってくるとは おじいさんも夢にも思わなかったと思うんですね だから、きっと目が点になったのではないかしらと思うんですけれども
7:58 ここら辺はちょっと漫画なんかで表すと面白いかもしれませんね 「なんで?」という風に そもそものことを問われてしまったんですね そしておじいさんがどういう風に答えるかというと 「変化の人といふとも、女の身持ちたまへり」と あなたは変化の人と、ちょっと人間とは違うかもしれないけれども 身体が、女の身体を持っているでしょうと だから「翁の在らむかぎりはかうてもいますかりなむかし」と おじいさん、私が在ると、生きている間はと このようにでもいることができるだろうと このままでもいける、という風に言っているんですね
8:55 私が生きている間はこのまま結婚せんで そのままの状態でいることもできるだろうと だけれども、そうもいかないでしょうと 私もいつ死ぬか分かんないから、という風に言っている訳ですね 「この人々の年月を経て、かうのみいましつつのたまふことを、 思ひさだめて、一人一人にあひたてまつりたまひね」と ちょっとここ難しいかもしれませんね この人々というのは複数になっているから これは五人の求婚者達のことを指している訳ですね 五人の求婚者達が年月を経て、もう長年ですね アプローチしてきている訳ですよね こういうことをしていらっしゃると
9:41 長年ですね、求婚してくださっていることなんだから 一人に思い定めなさいという風に言っている訳ですね ちょっと簡単に訳すとこういう事ですね 五人の求婚者が年月を経て求婚してくれているんだから もう定めなさい、決めなさいと 一人一人に会ってみてですね この人という一人を選びなさい という風におじいさんが言うんだと もう一人と結婚することにしなさいよ という風に言ったんですね
10:27 ここのやりとりがとっても好きで 私達は今、今の私にもよく分かるわと 今はそれほどでもないですけれども 一昔も前の私の母の時代なんかは もうある程度の歳になった女の子は結婚して というのがもう当たり前みたいに考えられていた 時代もあったらしいですね そういう時代はもうある程度の歳になったら まだ結婚しないの?みたいなね そういう親とか、周りの人達からの この圧迫感が強かったなんていう話を聞いたりします 今は本当にいい時代になったので まあそういうこともないけれども それでも何となくありますよね 結婚に限らず、無言のこの世間の常識
11:16 一般常識の圧を感じることって皆さんも間々あると思うんですよね 大学に行って立派になるために勉強しなさいよ、とか 色々言われますよね そういう世間の常識というものに対して 私達はそれを受け、心の中で反発しつつもですね 受け入れながら何とかやってきている訳ですけれども それに対してかぐや姫は何でという風に 素直に率直な疑問が言えるというのがとても何か うらやましいな、いいなという風に思います 女子からすれば「なんで結婚せなあかんの?」と、本当にその通りで
12:02 ちょっと拍手を送りたいようなところでもあります もちろん結婚はとても素敵なことですから、いいことなんだけれども 世間で言われていることに対して、ひとまず どうしてなのかしらという風に疑問を抱くということですね そういう態度ってとてもいいなという風に思います この『竹取物語』の作者は誰かはわかりませんけれども 男の人が書いたんだろうという風には言われています それにしてはこの人、なかなか女の人の心が分かっているな という風にも思ったりもするし 今とは、『竹取物語』で作られた時代は違うから また別の意図で書いたんだとは思いますけれども
12:50 今の私達が読んでも何かちょっと共感できるような シーンではないかなという風に思ったりします 常識と思われているものをですね そもそもじゃあ何でなの、という風に改めて考えてみる というこれはとても実は大事なことかもしれませんね そういう風に言われて 大きな目が点になったと思うんですけれども だけれどもやっぱり翁はかぐや姫のことに対して とっても大事に思っているというのが とっても伝わってきますよね おじいさんも、もう私があなたのことを見る事ができるのは いつまでかも分からないから、という風に言って とっても愛情あふれる答えだな、という風に思ったりもします
13:37 さあそこでですね、五人の求婚者の中から 一人に選ばないといけない、ということになってですね かぐや姫はどうするかというと それぞれの求婚者に課題を与える訳ですね それは難題であったんです 本当に私のことを思ってくれている人が誰かということを知りたいと そのためにそれぞれの求婚者に課題を与えて これを叶えてくれた人と結婚するわ という風にかぐや姫が言うんですね 五人の求婚者です 石作の皇子・くらもちの皇子・右大臣安倍御主人 大納言大伴御行・中納言石上麿足という
14:25 とっても身分の高い人々ですね アプローチしてきているんですけれども それぞれに、仏の御石の鉢・蓬莱の玉の枝 火鼠の皮衣・龍の頸の玉・燕の子安貝という この世にあり得ないものなんですけれども それを探してきてという、えらいムチャぶりをする訳ですね それに対して求婚者達五人はそれぞれ いろんな対応をしていきます それがとっても面白い読みどころでもありますね、この物語の ちょっと最初の三人を見てみましょう まず石作の皇子なんですけれども、この人に対しては 仏の御石の鉢を持ってきて、という風に言う訳です この石作の皇子というのは、どういう人か
15:12 どういう風に書かれているかというと物語の中では 「心のしたくある人」である石作の皇子はという風に 性格、キャラクターですね、キャラ設定がされているんですね 「心のしたくある人」というのは どういう人のことを言うのかなんですけれども 「したく」というのは今でも、旅行の支度をする ご飯の支度をするという風に言いますね 準備をするという意味がありますが、準備ができるということは 先の計画を見据えることができる 計画することがあるということなんですね、計画性があると ちゃんと先を見据えて計画を立てることができるという そういう性格の持ち主である 石作の皇子はどう思ったかですね
15:59 先の見通しが立つ石作の皇子は、こんなの見つかる訳がないと 探しても見つかる訳がないと判断した それでどうしたか かぐや姫に「行ってきます」という風に嘘をついて 三年後に、ちゃんと時間を置いているというところも 計画性がありますね 三年後にそれらしい鉢を持ってやってきた ところが、仏の御石の鉢は光るらしいんですけれども 全く光らない、ということで嘘がバレてしまった そんな人のことをかぐや姫は無視します もうこの人はダメという風になってしまう訳ですね 二人目くらもちの皇子、蓬莱の玉の枝という難題をだします この人は「心たばかりある人」ですね
16:48 「たばかる」というのは謀るということで これは策をたてるということなんですね、策略家です 策略家であるくらもちの皇子というのはどうしたかですね この人は船に乗って取りに行くよという やっぱりフリをするんですね フリをして、この人は三日です、三日ほどでこっそり帰宅と そしてお金があるからね、皇子ですからね 私財を投じ、国宝級のプロにということですから なかなかお金をかけてすごいものを作る、で出すんですね 国宝級のプロに蓬莱の玉の枝を作らせると それでそれを持ってきたので
17:34 一瞬、えっ、本物を持ってこられたと思ったかぐや姫は 「ねたし」と思うんですね 面白いですね、「ねたし」というのは これは漢字を当てはめると妬ましい いややわ、憎い憎らしいわと 何で持ってきよったんや、というような感じですね いややわ~という風に思ったと 嫌だわという風に思ったんだけれども その時、制作費の徴収に職人達がやってくると お金をまだ払っていなかったんですね 私財を投じたお金持ちであるわりにはですね ちょっとケチなところもあったんでしょうか まだ払いが終わっていませんよ ということで、職人達が押し寄せてきたと
18:20 それで嘘が発覚と、それでかぐや姫はですね 「笑ひさかえ」て玉の枝をつき返す 「笑ひさかえ」てと、これも面白いな 「さかえ」というのは栄えるという字ですよね だからすごく笑ったと言うんです もう、けらけらけらけらという風に、やっぱりざまあみろと けらけらけら~という風に笑ったということですね とても笑う、という風にして玉の枝を突き返しました ということで、この人もダメやったということになる訳ですね 三人目右大臣ですね 安倍御主人に対しては、火鼠の皮衣という これもありえないものなんですけれども、それを言ったと
19:08 この人はどういうキャラかというと 「財豊かに家広き人」と何かちょっと性格的なことではなくて 財産持ちでおうちも広いよ、というかなりの資産家ということですね そういう設定をされています さあ財力がある右大臣は 中国の貿易商から大金をはたいて火鼠の皮衣の買い取ると 本物か確かめる、それで持ってくる訳ですね それでかぐや姫はですね 「ええ?」とちょっと困るんやけど 「じゃあ本物かどうか確かめてみましょう」と 火鼠の皮衣というのは燃えないもの という風に、かぐや姫は言っているんですけれども かぐや姫が火をつけさせると メラメラメラっと燃えてしまって黒焦げになってしまう訳ですね それを見た右大臣は大枚をはたいている
19:57 大金をはたいている訳ですよ そのお金をはたいたものが一瞬にして 燃えカスになってしまったから、もう顔が真っ青なんですね 真っ青になる右大臣にかぐや姫は 「あな嬉し」と喜んだと 真っ青になっている右大臣を見て ああかわいそうに、ではないですね 「あな嬉し」ですね 「あな」というのは、とっても、まあ、と感動している訳ですね ああうれしいわ、という風に よかったわ、という風に喜んだということで この人もダメだったんですけれども それぞれの三人の求婚者に対してですね、かぐや姫が なんともドライな反応と、何と言ったらいいんでしょうね
20:42 冷たいというか、けらけらけらと逆に笑って ちょっとバカにしたような、そういう反応をとって この三人とは結婚せずに済んだわという、よかったわと そもそもかぐや姫は、何で結婚せなあかんのと思っていた人ですから 結婚にそこまで乗り気ではない、ただおじいさんが言わはるから おじいさんのためを思って結婚しようと思うんだけれども 五人はそんなに惹かれるところもないということでですね ここら辺のかぐや姫の複雑な心理なんかも考えながら このシーンを読むとまた違った読みができるかもしれませんね さあ、この後、もうお二方がでてきます 大納言大伴御行と中納言石上麿足
21:30 このお二人はどうなるのかというのを最後に読んでいきたいと思います ここでちょっと一旦きりますね