0:00 はい、こんにちは 今日は3講目ということで 『落窪物語』という物語を読んでいきたいと思います 聞いたことはあるかな 『落窪物語』ちょっと変わった名前がついている物語ですけれども これが今日の話にとても関わってくるタイトルなんですね まず、基本知識を押さえておきましょう ジャンルは物語でいいですね 成立は平安時代の中期中頃になります 大まかな時代区分でいうと、これ中古でしたね 平安は中古でしたね 作者は分かりません、未詳です これどういうお話なのかというと、ポイントは 現存最古の継子いじめの作り物語なんですね 継母が出てきて、継子をいじめるという
0:48 シンデレラですよね、日本版シンデレラストーリーという風に 思っていただいたらいいと思います シンデレラの話は きっと皆さん、ディズニーとかで知っていらっしゃる 小さい時に絵本で読んだりしていると思うんですけれども 王子様がね、助けてくれるという ガラスの靴が、というあのお話ですれども 日本版シンデレラはどんなお話なのかというのを ちょっとその西洋版と比べながら、心の中ね、比べながら 今日一緒に読んでみたいなという風に思っています そこにちょっと日本らしさとか 平安時代の人々の考える物語というのはどういうものであったのかとか そういうちょっとした日本の特性というのが
1:36 もしかしたら見えてくるかもしれませんね そんなことも意識しながら読んでみると面白いのかなと思っています 内容はですね 大まかに3つに分けます 1つ目は、継母からいじめられている 落窪の姫君、これが今日の主人公の姫君なんですね この姫君が王子様である 少将道頼に助けられる、救われるという これが第1段階なんですね これで終わりじゃないんですね そのあと、助けた王子様の道頼が いじめていた継母に復讐するというのがあるんですね 復讐で終わってしまうと この王子様が嫌な奴でお話が終わってしまいますので まだ3段階目があります
2:23 3段階目に復讐が終わった後 この王子様 道頼が継母達に温情を施すと 皆ハッピーエンドということで終わりという風に迎えるんですね この3段階を踏んでいます 今日はその一番最初のところですね 落窪の姫君が継母にすごくいじめられて それを道頼という王子様が助け出すという その最初のところを読んでみたいと思います 主要なメインの主要登場人物は、このような人々がいます まずいじめる継母、北の方はいじめる人です いじめられるのが落窪の姫君で、助けてあげる王子様 少将道頼
3:14 あと、やっぱりこういう物語がうまく展開すると面白くなるのは 名脇役の存在が大事ですよね あこぎと帯刀という これが脇役達になります あこぎというのは、落窪の姫君の侍女 お仕えしている女になるんですけれども あこぎと落窪の姫君は、落窪の姫君の本当のお母さん 実のお母さんが生きていた時から ずっとお仕えしているということでとても長い 付き合いで落窪の姫君のことを 本当に親身に大事に思っているというあこぎです 帯刀というのは、王子様の方にお仕えしているんですね
4:00 帯刀は少将の家来で このあこぎと帯刀は夫婦なんですね この夫婦が協力して タッグを組んで、この二人のカップルを 何とかカップルにしようとするし カップルになった後も いろいろ手助けをしてあげるという、本当にこの人々の働きというのは この物語の中でとても大きいです この二人の掛け合いというのかな やりとり、夫婦漫才じゃないけれども、夫婦のやりとりも なかなか面白くて、そういうところも『落窪物語』の読みどころです それぞれの登場人物が、とてもキャラが立っているんですね 継母はもうとにかく嫌な継母だし
4:47 あこぎと帯刀はまたそれぞれ面白い夫婦だしということで それぞれのキャラがとてもイキイキしていて とてもテンポよく話が展開していくという なかなかうまいですよ 作者はちょっと分からないですけれども 上手なお話で本当に軽く読めますので また興味を持った人はね、是非ね、最後に紹介するような おすすめ本を手にとって、是非読んでみてほしいなという風に思っています では、最初のところ、ちょっと見てみましょう 継母のひどい仕打ちとタイトルをつけました 落窪の姫君がどういういじめというか 意地悪を受けていたのかというところ これはちょっと本当の話はとても長いんですけれども
5:35 今日はかいつまんで 2つのひどい仕打ちを見ていきます まずひどい住まい、ひどい名前ということなんですけれども 物語を読んでみましょうね 中納言には娘が大勢いた 長女・次女には婿を迎え、別棟の西の対・東の対に 派手に住まわせている 三女と四女も成人式をさせて、大事にしていた これが中納言と北の方、継母の間に生まれた 娘さん達が4人いた、ということなんですね 中納言と北の方の間に、4人の娘さん達がいると
6:26 長女・次女・三女・四女とちょっと略しますが がいると、4人の娘さんがいて この4人の娘さん達にはそれぞれ 派手な暮らしをさせたり、成人式もちゃんとしてあげてという風に 北の方の実の娘ですから、大事にしている訳ですね 一方、皇族出の女に生まれた母のいない姫君がいた 一方で、皇族出の女 だから非常に身分が高い女ですね 高貴な女の間に生まれた母のいない姫君がいたと だからこの人はですね、この人はもう亡くなってしまっている訳ですね
7:17 どう書いたらいいでしょう 分かりますか、天使の輪ですけれども 亡くなってしまっているということになる訳です 中納言の北の方は、この姫君をですね 自分の子どもじゃないこの姫君を 女房以下に思って、ということは すごい見下している訳です 見下して、寝殿の「落窪なる所の二間なるに」住まわせていたと 寝殿の中の「落窪なる所」というのが出てきますね 落ち窪んだところということです どんなところなんでしょうね ちょっとよく分かりませんが いいとこじゃないわね 窪んでいる、落窪んだところで
8:02 二間なるに、この二間というのは 柱3本の間が二間ということ 辞書的にはそうなんですけれども、今の私達には ちょっと寝殿の二間というのは感覚的には ちょっと分かりにくいところありますね ただ、この文脈で言うとニュアンスとして 広いところじゃないな、というのは分かりますね どうも狭いところに住まされていたんだな ということは想像がつきますね 狭いという風に考えてみましょう だから狭くて窪んでなんか暗そうなですね そういうところに住まわせる これはまずひどい住まいですね そして「君達」や「御方」と言った 敬称を付けては絶対にお呼びにならないと
8:49 本当だったら、皇族出の良いお血筋の娘ですから 「君達」とか「御方」といった敬称を、姫君につける敬称をつけて 呼ぶのが当然であるのに 継母はそんなもんつけてやるもんかと見下していますからね ということで、そんなものを付けては絶対に呼ばないと それでも「中納言の思うところもあるだろう」と 中納言は実の父親ですからね それに遠慮して「落窪の君と言へ」とおっしゃるので 皆そのように呼んでいた せめてということで「落窪と言え」ではなくて 「落窪の君と言え」という風に ここはちょっと遠慮している訳ですね
9:39 父親に遠慮して「君」とつけている 「落窪の君と言へ」とおっしゃるので 皆そのように呼んでいたと それが落窪の君、主人公ですね そうするとですね、この落窪の君という名前をつけたのが 北の方だということが分かりますね、ひどいね 名付けると 前回、前々回もやったように
10:26 名前をつけるというのは その人を、ほかとは違う特別なものだと思うと 区別するという意味があるんだよ というお話をしてきましたよね 竹取の翁はかぐや姫のことを とても大事に育てていたので、成人というか 大きくなった時に、なよ竹のかぐや姫という お名前を付けてあげた訳ですね なよ竹、なよなよとしたいうのは 生き生きとしたというか、そういう 青々としたというか、そういうニュアンスですね 美しい竹の輝くような姫君だという とても大事に思っているな ということがわかるお名前を付けてあげた訳ですよね それに対して北の方は
11:12 もうすごく見下して あんまり好きじゃない訳ですね、この娘のことをね ですから、落ち窪んだ所に住まわせて その部屋にちなんでですね 落窪だなんてね、ひどい名前をつけるという まず1つのひどい仕打ちですね そしてそれだけじゃなくて、いろいろやるんだけれども 大きいのは裁縫地獄ということがあります どういうことか 落窪の君は寂しい時を持て余し、裁縫を習っていたので とても上手にひねり縫ひもなさる、ですね この落窪の君はお裁縫が上手だったんですね ひねり縫ひということもできるんですよ、という風に書いています このひねり縫ひというのが どういう縫い方かというのは
11:58 私ちょっと平安の裁縫の専門家ではないので、解説によりますと 普通、お裁縫というのは針と糸を使って縫いますよね でもこのひねり縫いというのは その針と糸を使わない縫い方 どんなの?と思いますけれども そういうそれは高度なテクニックらしいんですね 布の縁とかが糸がほつれてしまったりしますよね、切ったままだと
12:44 そういうのをほつれないように 糊を使ってうまく布をひねり込んでですね ほつれないようにするという 布の処理の仕方のことらしいんですけれども それはやっぱり、ちょっと手先が器用でないと そういうことはなかなかできませんよね ですから、非常に高度なテクニックを持っているという そういう落窪の君は、お裁縫がすごく上達していたんですね それを見て北の方は、しめしめという訳です 「いとよかめり」と、まあいいわねと 「ことなるかほかたちなき人は、物まめやかに習ひたるぞよき」 と言って二人の婿の装束を 二人のお婿さんいうのは長女と次女に 婿を迎えていましたよね その婿の装束を
13:31 少しの暇もなく、かき集めて縫わせると お婿さんの装束を準備するのはそれは 奥さん、お嫁さんの実家のお仕事なんですね お嫁さんの家の仕事なんですね それを、落窪の君しめしめと 裁縫うまいでということで、それにさせる訳です 少しの暇もなくですね、縫う物を集めてきて縫わせると その時の言葉が酷いね 「ことなるかほかたちなき人は」 「かほかたち」というのは容貌ということですね 「ことなる」とは他と違うということですけれども
14:18 ここの意味では他と違って 美しいということでしょうね すごく美人、とっても美しい容貌でない人、でない人ですから あの不細工な方は というようなニュアンスで言っている訳です 顔もそんなにええ訳ちゃうねんから そういう人は、「物まめやかに習ひたるぞよき」と 「物まめやかに」は真面目にということですね 真面目にお裁縫でも習っとけばいいのよと それぐらいしか取り柄がないんだから、みたいなそういうニュアンスですね と言って、二人の婿の装束を 少しの暇もなくかき集めて縫わせると
15:06 最初のうちしばらくは、頼まれた落窪の君も 「ああ忙しいわ」と思うぐらいですんでいたけれども だんだんそれが、多くなってくる訳ですね そうすると「夜も寝も寝ず縫はす」と、ひどいね 夜も寝させない 「す」というのは使役ですから 継母は睡眠時間も与えないくらい、縫え縫え縫えという風に 落窪の君のところに縫物をさせると それだけじゃなくて、いささかおそき時は ちょっとでも ちょっとでもできるのが遅れると もう寝る間もないぐらい縫っている上にですね
15:51 できるのがちょっと遅いわくらいでですね こういう風に言う訳です 「かばかりのこをだに、ものうげにしたまふは 何を役にせむとならむ」と責める訳ですね これぐらいのことでさえ、ということですね 「ものうげ」「ものうし」というのは、嫌そうということですね 別に嫌そうな訳じゃないんですよね もうハードで大変な訳ですよね それなのに、こんな裁縫くらいもう嫌々されるなんて そんな嫌そうにするなんて 「何を役にせむとならむ」と言うんですね あなた、いったい何を自分の役目としようとしているのと
16:37 逆に言うと、あなたは縫い物ぐらいしか 役目はないでしょうという風に言っている訳ですね ちょっと直訳で書いていきますね 何を自分の役目 にしようと 思うのか これくらいの裁縫ぐらいのことでさえですね 嫌々なさるなんて、一体何を あなたは自分の仕事にしようと思っているんですか 自分のここにいられる意味って何やと思ってんの みたいなことですね、裁縫ができるから あなた取り柄があるのよと それなのに、それさえ嫌そうにするなんてという風に責めるので
17:23 落窪の君は悲しんで 「いかでなほ消えうせぬるわざもがな」 と嘆いていると 「いかでなほ」とは何とかしてね 「消えうせぬる」と、もう消えてしまいたいと 「もがな」 と言うのは何々したいという願望なんですね もう消えてしまいたいと、つまりもうこの世から消えてしまいたい もう死んじゃいたいということだよね、それぐらい思うほど ひどいよね もう死にたいと思うくらい裁縫をさせるって どんなことよと思うんですけれども そういう裁縫地獄の目に遭わせる訳です その上、三女も成人させ、すぐに蔵人の少将と結婚させた後
18:16 そうすると、お婿さんが一人増える訳ですので 落窪の君は、さらに暇がなく 苦しみが増すばかりであると もっともっと縫物が増えてきた訳ですね たまらんなぁという風に、継母のひどい仕打ちに 従うしかないという落窪の君なんですね はやく王子様が現れてほしいなぁと思うんですけれども では、その後をまた見ていく ちょっとここで一旦休憩しましょうね